今日は痴漢
2007.03.11
作:石山
俺はきよひこ。祈願成就下請連合の一員である。叶えた願いはまだ数えるほどだが、任務は立派に果たしてみせよう。ついでに、ついでにでいいので童貞の卒業もお願いします神様。
今日はというか、今日も健司との待ち合わせが合ったりする。健司には下連のことを言ってある。奴は何かと便利な能力くらいにしか考えてないだろうが、俺自身はこの制御のむずかしさにはちょっと悩んでいたりする。まずは、相手の願い事がはっきり分からない場合に願いを叶えるとかって無謀極まりない。
まぁ、おれの明晰な頭脳をもってすればそれも不可能じゃないが・・・とか、そんな頭脳どこにもねえよ。
う、やべ・・・。
今朝から腹の調子がよくなかったりする。それで、駅の唯一のトイレへと駆け込んだ。しかしそこには無情な現実が待っていた。
「こしょうちゅう・・・」
そう、大便器の全部が全部というか二つだけなんだが、二つともが故障している。どこかの馬鹿がやったであろう破壊後を見てしまうとますます腹の調子が悪くなってきた。
「このトイレの他にトイレというと・・・」
土地勘を生かして考える。そう、一番近いトイレは走って信号を渡って5分の所にある。しかし、その結論は即座に却下された。
ううう、もうもたねえ・・・。この歳になってうんこ漏らすとか冗談じゃねえ。おまけにこの服いちばん気に入ってる奴じゃねえか。
脂汗が流れるのも気に留めず、中腰で構えをとった俺は、そのまま硬直する。そのとき、ペンダントが淡い光を放った。
こ、これは・・・。俺のピンチに報酬が消費されようとしているのか。ナイス神様。
しかし、一向に便意が消えない。全然変わって・・・あれ。
「あれ・・・」
思わず上げた声は、男心をくすぐるような女の声だった。トイレの大きな鏡には、ふわっとしたミニスカートにジャケットの大学生くらいの女が映っていた。
「そうか、女子トイレ!」
俺は急いだ。はいているのがパンプスだったりするのも気に留めず、スカートが翻っていくのも気に留めず女子トイレにちょこちょこと走って駆け込んだ。男子トイレとは色調の違う赤っぽいトイレの個室へと入る。
「はぁ・・・・」
これは九死に一生を得たというやつだな。こういう報酬の支払われ方なら、まあ、致し方ないだろう。ほっとしたため、そんな損得勘定がぐるぐる頭の中を回っている俺だったが、一つ大変な事に気づいた。
どうやって拭けばいいんだ・・・。下からか・・・上からか・・・。
俺はトイレットペーパーを手に持ったままか考え込んでいた。
どっちかから拭くと体に良くないとか聞いた事あるようなないような・・・。んー。あ、そうか。ここは本人に任せればっと。
俺は疑似精神を起動した。そうすると、慣れた手つきで前から拭き取ってしまう。感じるとか感じないとか分からない間だった。こうやって拭く訳だな、なるほど。健司にも教えてやるか。俺は、疑似精神を解除して、拭き方の練習を繰り返してみた。
こうして俺はすこし障害はあったが、健司との待ち合わせの場所へと急ぐ事にした。ちょっと練習しすぎたかもしれん。ほてった顔を冷たい風が冷ましてくれる。ただ、遅れた分、ちょうど帰宅ラッシュとぶつかってしまった。
待ち合わせ場所が、逆方向ならばもっと空いていた物を・・・。健司との待ち合わせは下り方向にある駅であるため、都市部から帰宅するサラリーマンや学生で車両はいっぱいだった。しかし、身長が低いと息が苦しいってのは本当だな。おまけに急ぐために急行電車にのらなければならなかった。急行なら待ち合わせの駅まで一本なのだが、この状態が15分つづくとか嫌になる。
気づくと俺は背広をきた男たちの谷間へと入ってしまっていた。発車後すぐにカーブにさしかかる。車内全体が、カーブの外側へと押し流される。すると目の前の男が俺の方に倒れてきた。つり革をもっていなかったらしい。足下に空間がないため、俺もその間に挟まれて、さらに後ろの人にあたることになる。俺の胸がその間につぶされる。
「きゃ」
自然とそんな声がでてしまう。
「失礼お嬢さん」
俺は、『いいえ』と小声で言うと足をふんばる。さらに車両の奥へと押し込まれて行く。男の汗臭いにおいや、整髪料のにおいがぷーんとただよってくる。
うへー、はやくつかないかな。
そのとき、俺の尻に何かが当たった。どうせ鞄かなにかだろうと思いきにもとめずにいた。しかし、当たった物は円運動をはじめた。そう、俺の尻をなで回しているかのように・・・。
これは、痴漢・・・?
当然の事だが、俺は痴漢にあったことなんてない。もちろん、したこともない。でも、これが痴漢なんだという事はすぐに分かった。
どんなやつがと思い振り返るが茶色い背広男の肩でよく見えない。
「ひゃん」
うあ、声出しちまった・・・。
いきなりスカートの中へと手が入り込んできたからだ。そしてそのまま俺のパンツ、いやパンティの中へと手をつっこんできた。こいつ、なんて大胆な。俺は、振り返ろうとしたが、身動きがとれない。こうなったら相手の手を掴むしかない。俺は、なんとか右手を自分の背後へとまわそうとした。
えっ。
俺の手は何者かに掴まれていた。しかし、尻をなで回す手は止まっていない。これはもしや集団痴漢・・・。そう考えるとつじつまが合う。いやに密度の高い俺の周辺。男たちが俺の視界を隔て、体が動かさないように固めているに違いない。そうこうしているうちに自由だった左手までつかまれてしまう。ごつごつとした大きな男の手だった。
俺は必死に力を入れた。しかし、数人からの拘束は俺のひ弱な腕では振りほどけない。
びくっ。
俺の股間へと手が回ってきた。パンティはすでに膝までずり下げられている。股間に回った指は、もてあそぶように俺の毛をかき回す。じらしているつもりか・・・。そして、俺の割れ目へと指が侵入してきた。すばやい割れ目の中から一番敏感な部分を探り当てる。そう、俺のクリトリスへと微妙な摩擦が加えられる。腰が引けてくるが。そこには何か固く棒のような物が押し当てられているのがわかる。
くそ、どうにかならないのかよ・・・。
そのうち、クリトリスに意識と血液が集中し始める。おまけに股間から愛液が漏れてきたようだ。俺の太ももをしずくが伝わって行く。
次に別の腕が上着の裾から入ってくる。ブラジャーが手早く外される。ブラジャーは抜き去られ、俺の胸はシャツの生地を直に感じるようになった。しかし、入った腕のせいで激しく形をかえる上着の中では、男の手が俺の胸を揉みしだいている。そのうち、乳首へと愛撫がはじまり、再び全体が揉まれる。そんな行為が繰り返し行われる。
「ちょと・・・おまえら・・・」
荒い息を整えようとするが、じんじんと響いてくる快感と嫌悪に呼吸がしづらい。今度は大きな声をだそうとしたその時、目の前が歪んだ。
つんとした匂いで頭がしびれている。のどもひりひりとして調子がわるい。俺は、意識を失いかけたのか?いや、本当に奪われていたようだ。俺は寝ぼけているような意識の中、自分が前屈みになっていることを知った。掴まれた腕に、胸を揉む手そして腰に当たった腕によって支えられているようだ。
う、この感触・・・。
鈍い感触の中に股の間に異物が挟まっている感覚がある。何かが俺の中へと割り込んできている・・・。それは、おまけにゆっくりと振動している。
ずん、ずんというリズムが俺のしびれた脳幹をさらに揺さぶってくる。頭が痛い・・・。
悲しみに快感が織り交ぜられた感情がオートから流れてくる。涙が込み上げてよく見えないが、胸はもみくちゃにされ、すでに上着がよれよれになっているのが分かる。いつの間にかパンティも消えているようだ。口の中には何か入れられているようで息がくるしい。
・・・倒れそう。
「ぅーぅー」
遠くでそう聞こえる。いや、これは俺だが俺じゃない、オートだ。オートが働いている。オートもさすがに俺の意識がなくなっている時には動けない。しかし、かろうじて保っている俺の薄い意識の下で稼働しているようだ。
たすけて・・・だれか・・・。
「あなたたち、その人を離しなさい」
毅然とした少女の声が聞こえた。俺を掴んでいた手が一斉に離れた。俺は、よろけて壁にぶつかりそうになる。そこを誰かが支えてくれる。そのとき電車が駅に着いた。
「大丈夫?」
どうやら追っ払ってくれた上、その少女が肩を支えてくれたらしい。オートは、恥ずかしいのと苦しいのでうつむいたままになっている。
「はい・・・」
駅のホームへと連れて行ってもらう。俺はベンチに座り、その子が隣に座る。
「だめよ。ちゃんと助けを求めなくちゃ。わたしだったら、相手の手でも引っ掻いてやるわよ」
オートが、ぽろぽろと泣き出した。
「あぁ、怒ってるんじゃないのよ」
ようやく俺の意識もはっきりしてきた。これならオートを解除しても大丈夫か。
「はい、ありがとうございます・・・」
やっと少女の顔を見た。
うわ。
妹の美奈だった・・・。
「警察いく?病院もいかなきゃね・・・」
気遣ってくれるのはとても嬉しいが、こっちはバレないかどうかでいっぱいいっぱいだった。
「あの、もう大丈夫です・・・わわっ」
慌てて立ち上がったせいで、スカートがベンチにひっかかる。忘れていたが、いまはノーパンだった。あわててスカートを抑える。男の俺からするとスカートだってはいてないも同然だ。
「ちょっとこっちにきて・・・」
「え、ちょっと」
美奈は俺の手をひっぱって女子トイレの中へと入った。個室に入った俺たちは。
「あの、これつかって。おろしたてだから使ってないし・・・そのままじゃ帰れないでしょ?」
そういって、美奈はポーチからパンティをとりだした。美奈・・・。美奈の好意を無にする訳にも行かず、俺はそれを身につけた。
その後、警察とか病院とかいう話に首を横に振り続けて、なんとか美奈と別れた。いい妹をもってお兄ちゃんは嬉しいぞ・・・。
しかし、痴漢にあって妹に助けられた上、妹のパンティをはく兄ってどうおもいますか、神様・・・。
あとがき
妹、美奈に助けられるという兄、清彦。もう、情けなくてかわいい状況です。美奈がこれ以降積極的に出てくるようになります。
石山